林正義「生活保護と地方行財政の現状―市単位データを中心とした分析」(2010年)

林正義,2010,「生活保護と地方行財政の現状―市単位データを中心とした分析」『経済のプリズム』(参議院事務局企画調整室)78, 1-30.

生活保護に関する法律のことなど、これまでよくわからなかったことがクリアになり、勉強になった。
この論文の含意は、以下の引用部分にまとめられている。

本稿の目的は日本の生活保護制度を解説し、その現状を、地方データを用いて概観することであったが、ここでの議論からは次のような含意を得ることができるかもしれない。生活保護世帯の増加は、景気の悪化という循環的要因に加え、高齢化という構造的要因が大きな影響を与えている。そしてそれは、日本では、無拠出の老齢年金手当のような、生活保護とは独立した高齢者の所得保障制度が存在せず、かつ、生活保護制度が低所得者の医療費もカバーしていることによる。今後、都市部=人口規模が大きな地域においても高齢化が急速に進み、かつ、多くの無年金・低年金者が発生すると予想されることを鑑みると、都市部における生活保護世帯は今後も増大し、その財政を圧迫することが懸念される。もちろん、国による財源保障が十分であれば、大きな心配は必要ないかもしれない。しかし、現行の地方に対する財源保障制度を所与とする限り、都市部ほど財源不足は拡大する傾向にある。いずれにせよ、国と地方の関係も踏まえた、生活保護制度の大きな改革が必要となろう。(p.29)

生活保護費をなんとか押さえようとする方向で議論するのではなく、生活保護制度と生活保護行政に係わる地方自治体がいろいろなことを「抱えすぎ」なことにもっと注目することが必要がある。