鈴木大介『家のない少女たち』(2010年)

奔放な10代少女の逸脱ばかりがクローズアップされたテレビの「プチ家出」報道。
だが、その後の家出少女について、誰が何を語っただろう。
親からの虐待や貧困、施設からの脱走など様々な背景を抱えて路頭に迷う「家に帰れない」少女たち。
彼らは食べるため、そして寝床を確保するための売春を強いられる、いわば日本のストリートチルドレンだ。
そして、皮肉にも行き場を失った少女らの受け皿となったのは、下心を秘めた「泊め男」や、未成年でも雇用する違法売春組織だった。
踏まれ、利用され、社会の生ゴミ扱いされ、それでも立ち上がる!8年近く続けた取材で見たのは、圧倒的不遇の中でも力強く生き抜く少女たちの姿だ。

第1章 たった一日の母子
第2章 ご飯とふりかけだけで育った
第3章 監禁風俗
第4章 大阪のババ子
第5章 泊めた男と仔鹿ちゃん
第6章 売春組織に救われて
第7章 オジサンもっと、ギュッとして
第8章 あたしのお姉ちゃん
第9章 お母さんごめんなさい
第10章 お前、援交やってこい
終章 世界で一番幸せだった

1990年代初頭に造語された「援交」という言葉。もはや社会に馴染みつつも廃れた感のある言葉だが、手を染める少女らの数はケータイの普及とともに増加し、子供たちの生きる現場でその言葉はまったく廃れていない。その多くは好奇心や小さな金銭欲から一回や二回やってみて、もう二度とやらないという層だが、その中の極少数に「毎日援交、ずっと援交」という少女らが存在していた。背景を探れば、親の貧困や虐待、育児放棄、そしてイジメに、本人の精神的疾患と、長期間の家出がある。そのいくつかを小さな身体に内包する少女もいた。そこに、安直な言葉ながら現代社会の闇を垣間見た気がしたのである。

彼女たちは、生まれつきの被害者だ。性的に、経済的に搾取され、路上に彷徨う彼女らを救う方法はどこにあるのか。いくら考えても、答えは一つしか出てこない。児童福祉の充実だと僕は思う。(p.244〜245)