「特集:どうつくる、市民のセーフティネット」『市政研究』(大阪市政調査会)162号/2009年1月

「社会的セーフティネット再構築の基本課題−二〇〇九年初頭におけるラフなデッサン−」澤井 勝
「「福祉から就労へ」の政策転換と自治体」福原宏幸
生活保護制度改革と就労支援体制の検討−イギリスとの比較を通じて−」所 道彦
「自治体現場から生活保護制度を考える−大阪市職員労働組合の取り組み報告−」山口勝己
地方自治体における「課題のある子ども」支援施策の今後を考える」住友 剛
「ホームレス問題と自治体および民間・NPOセクターの課題−「もう一つの全国ホームレス調査」を手がかりに−」水内俊雄/中山 徹
社会的企業論の現状と課題」橋本 理
「新たなセーフティネット構築のための国および自治体財政の課題」松本 淳
「あとがき―地域に市民のセーフティネットを」別当良博

今日は、このうち、福原氏、所氏、山口氏の論文を読む。

福原氏の論文は、政府や厚生労働省の雇用・就労政策と、自治体の現場での取り組みを相互に見据えつつ、「福祉から就労へ」という大きな流れを捉える論文である。

所氏の論文は、イギリスの就労支援プログラムを紹介しつつ、日本の生活保護受給者に向けた就労支援プログラムについて論じる。
現在、就労支援プログラムの外部委託など、「給付管理」と「ソーシャルワーク援助」を分離して受給者を支援する試みが、多くの自治体でみられるようになった。その可能性と課題が論じられており、興味深い。

山口氏は、大阪市職員労働組合の組合員である。大阪市職員労働組合は、労働組合の立場から、市政改革に関する研究活動を行っている。そのうちの一つとして、生活保護行政の現状分析を行う「セーフティネット・ワーキングチーム」を結成。そこで議論された内容を紹介。特に、西成区の生活保護行政について現状分析がなされており、興味深い。

西成区の生活保護受給率は、際立って高い。仕事を求めてやってきた日雇い労働者が多く住むところである。不況のために仕事がなくなった時期と、高齢化の時期が重なったため、多くの生活保護受給者を抱えることとなった。ホームレスも多い。

今後に向けては、「(生活保護を受けている)人たちを迎え入れてともに地域の構成員として包み支え合うまちぐくりに向けた取り組み」が必要であり、現在では、「地域福祉アクションプラン推進委員会の下に生活保護部会を置き、生活保護受給者のみならず、低所得者野宿生活者もふくめた今日的な「つながり」の構築をはかっていくための多様な取り組みを展開している。」

生活保護を早期に適用して、就労支援事業を積極的に活用することを真剣に検討すべき。その場合、就労支援事業の内容充実とともに地域における雇用創出がひとつの課題となる。」