生田武志「釜ヶ崎と 「西成特区」 構想」『現代思想』2012年5月号 特集=大阪 

現代思想2012年5月号 特集=大阪

現代思想2012年5月号 特集=大阪

【大阪の現在】
“へんにし” している大阪人 / 井上理津子
《エンタメ系の北朝鮮》 みたいな国の絶望都市(ディストピア)・大阪では、夜中に音楽をかけて踊っているだけで警察が取り締まりに来る / モブ・ノリオ
大阪はなぜ橋下徹を選んだか / 木村政雄

ポピュリズム
独裁の誘惑 戦後政治学とポピュリズムのあいだ / 森政稔
「民主主義の終り」 と右翼ポピュリズムの挑戦 / シャンタル・ムフ (訳=木下ちがや)

【〈改革〉 を問う】
大阪教育行政二〇一一〜二〇一二 / 大内裕和
経済的地盤沈下大阪都構想 / 長尾謙吉
釜ヶ崎と 「西成特区」 構想 / 生田武志
グラスルーツと文化政策 大阪の現代芸術をめぐるここ一〇年の省察 / 吉澤弥生

【古層から】
アースダイバー的 「大阪の原理」 / 中沢新一

【インタビュー】
陰画としての大阪 / 金時鐘 [聞き手=細見和之

【ダイアローグ】
歴史の亀裂を遊歩する山猫たち
 『通天閣』 と革命的詩学、資本主義の段階、民衆の形成 / 酒井隆史+マニュエル・ヤン

【民衆都市】
陸の暴動、海のストライキ / 原口剛
ポストモダン都市における唯物論詩学・試論 / 櫻田和也
被差別民と “大大阪” 部落と寄せ場の歴史像 / 吉村智博

【資本/空間】
大阪1990 空間構想と 〈場所〉 の創出 / 加藤政洋
「公都」 大阪の制度疲労と、新たな 「民都」 の創造  / 水内俊雄

釜ヶ崎は日本社会が抱える労働、差別、貧困、医療、福祉の矛盾が集中する「日本の縮図」とよく呼ばれている。

いま、釜ヶ崎が問題視される理由の一つは、生活保護費など、行政から投入される対策費の莫大さによるのだろう。

しかし、われわれから言えば、「そんなことになるのは、何十年も前からわかってたことではないですか」。建設・土木業界と人材派遣業者の意向通りに労働者を使い、日雇労働に対するセーフティネットを整備しなければ、そのうち労働者の多くが「野宿か入院か生活保護」になってしまうことは、現場にいるだれにとっても分かりきったことだったからだ。

「西成を変える」ためには、釜ヶ崎の根本問題である「不安定雇用と野宿」の問題に取り組まなければならない。それ無しに「企業誘致の手法を使い、子育て世帯を呼び込む」(橋下市長の発言)というのは、「日本は少子高齢化しているから、外国から若い家族を呼び寄せて解決しよう」と言うようなものである。