NHK取材班『NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃』(2012年)
- 作者: NHK取材班
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2012/04/14
- メディア: 単行本
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終戦直後を超える非常事態!働かないのか?働けないのか?悲鳴を上げる自立・就職支援の現場に密着。
受給者の実態から貧困ビジネスの闇まで制度の矛盾を浮き彫りにする出色のドキュメンタリー。第1章 働ける世代の生活保護受給
第2章 なぜ生活保護は急増したか?
第3章 貧困ビジネス業者
第4章 大阪市vs貧困ビジネス業者
第5章 受給者が沈み込む闇社会
第6章 第二のセーフティーネット
第7章 自立に立ちふさがる壁
第8章 生活保護をどうすればいい?
この本を読んでいて、先日のエントリーで紹介した、『現代思想』2012年5月号の生田武志さんの論考(釜ヶ崎と 「西成特区」 構想)を思い出した。
「生活保護の問題は「不正受給」ではなく「孤立」(関係の貧困)にある」という言葉だ。
「新しい仕事を覚えるのがしんどい」、「就職活動をすることがしんどい」
たしかに、しんどいことは多い。何十社にも面接に行って、落とされ続ければ、就職活動をすることも嫌になるだろう。心がくじけ、外出することもおっくうになるだろう。
実際、大学生の就職活動もそんな感じだ。でも、誰もが、生活保護を受けるわけではない。多くの人は、いろいろな失敗で打ちのめされても、もう一度頑張ろうと、また立ち上がることができる。
でも、生活保護受給者の人の状況は違う。
「生活保護を受ける生活を続けていくうちに、働く意欲は確実に減っていく」
「生活保護を受けながらの一人暮らしで、他人と関わりを持たなくても暮らしていけることが、後藤さんからコミュニケーション能力を奪っていた。」
やっぱり問題なのは、「孤立」なんだと思った。
くじけた時、やっぱり「背中を押してくれる人」の存在は大きい。
時にはしかって、励ましてくれる人の存在。それは家族だったり、友人だったり、恋人だったり。
すぐに心がくじける人に、「努力をしていない」ということはたやすい。しかし、なぜ「努力」ができないのか。長い時間かけて「落ちて」いった人は、また「立ち上がる」のに、同じくらいの時間、いやもっと長い時間が必要になる。
たしかに、仕事はあるのかもしれない。人を求めている企業もいる。
でも、長い間かけて「立ち上がる気力」をなくしてしまった人が、自然に働いていける環境は、ない。それを「贅沢」というのか、あるいは、そういった人が自然に、無理なく働いていくことができる環境こそ「まっとう」だと考えるのか。
生活保護受給者の状況から、私たちはこの問題をゆっくり考える必要がある。