Oesch, Daniel, and Jorge Rodríguez Menés, "Upgrading or polarization? Occupational change in Britain, Germany, Spain and Switzerland, 1990–2008", (2011)

Oesch, Daniel, and Jorge Rodríguez Menés, 2011, "Upgrading or polarization? Occupational change in Britain, Germany, Spain and Switzerland, 1990–2008", Socio-Economic Review, 9(3): 503-531.

We analyse occupational change over the last two decades in Britain, Germany, Spain and Switzerland: which jobs have been expanding—high-paid jobs, low-paid jobs or both? Based on individual-level data, four hypotheses are examined: skill-biased technical change, routinization, skill supply evolution and wage-setting institutions. We find massive occupational upgrading which matches educational expansion: employment expanded most at the top of the occupational hierarchy, among managers and professionals. In parallel, intermediary occupations (clerks and production workers) declined relative to those at the bottom (interpersonal service workers). This U-shaped pattern of upgrading is consistent with the routinization hypothesis: technology seems a better substitute for average-paid clerical and manufacturing jobs than for low-end interpersonal service jobs. Yet country differences in low-paid services suggest that wage-setting institutions channel technological change into more or less polarized patterns of upgrading. Moreover, immigration surges in Britain and Spain seem decisive in having provided the low-skilled labour supply necessary to fill low-paid jobs.

 

この論文では、過去20年間の、イギリス、ドイツ、スペイン、スイスにおける職業の変化を分析する。拡大する高賃金の仕事とは、低賃金の仕事とは、どんな仕事だっただろうか?個人レベルのデータに基づき、次の4つの仮説が検証された:技能偏向的技術変化、単調化、技能供給の変化、そして賃金設定制度である。我々は、教育レベルの上昇という事実に一致する、大規模な職業のアップグレードを発見した。職業ハイアラーキーの上位である管理職や専門職で雇用が拡大しており、同時に、下位の職業(対人的サービス労働者)と比べて、中間的な職業(事務や生産労働者)は相対的に減少していた。このU字型のアップグレードのパターンは、単調化仮説と合致している。技術は、下位の対人的サービスの仕事よりも、平均的な給与を得る事務や製造業の仕事を代替したようである。しかし、低賃金のサービス職に関する国による違いは、賃金設定制度が、技術変化を、多かれ少なかれ両極化した上昇パターンにつなげる経路となっていることを示している。さらに、イギリスとスペインにおける移民の急増は、低賃金の仕事に就く低技能の労働力を供給する際に決定的であったようである。

ミクロレベルのデータと職業の細分類を用いて、イギリス、ドイツ、スペイン、スイスの1990/1991年から2007/2008年の職業構造の変化を分析。4つの仮説を検討し、各国の共通性と異質性を描き出している。

職業構造の変化やそれに伴う賃金格差の変化を説明するうえで、技能偏向的技術変化(SBTC)仮説はよく参照される。しかし、この仮説だけでは、過去20年間の職業構造の変化を説明できない。技術変化は高技能の仕事を増加させただけでなく、単調で技術によって置き換え可能な中間レベルの仕事(事務や工場での仕事など)を減少させた。そして、技術によって置き換え可能ではない、対人的なサービス職が増加し、中間層の空洞化が起こったのである。

ただし、興味深いところは、どの国も、同じように技術変化の影響を受けたわけではない、ということである。筆者らによれば、「労働市場における受給と供給の要因は、常に制度的メカニズムで経路付けられている」。職業構造の分極化が進んだのは、スペインとイギリスであった。たとえば、弱いユニオン、賃金決定制度が調整されてない、失業補償の代替率が低いなど、イギリスでは低賃金のサービスの仕事を創出するコストが、他の国と比べて低い。こういった制度的な違いが、各国の違いをもたらしたようである。