宮本みち子・小杉礼子編著『二極化する若者と自立支援―「若者問題」への接近』(2011年)

二極化する若者と自立支援―「若者問題」への接近―

二極化する若者と自立支援―「若者問題」への接近―

第I部 若者の実態をどうみるか
第1章 自立に向けての職業キャリアと教育の課題(小杉礼子
第2章 自立に向けての高校生の現状と課題(藤田晃之)
第3章 家族と福祉から排除される若者(岩田正美)
第4章 自立困難な若者の研究動向(太郎丸博)

第II部 新たな若者政策の実現に向けて
第5章 若者の自立保障と包括的支援(宮本みち子
第6章 企業の人材活用の変化と非典型雇用(佐藤博樹
第7章 新たな社会保障に向けて―若者の生活を守るためには(大津和夫
第8章 雇用保険でも生活保護でもない第2のセーフティネットと伴走型支援―支援の現場で見えてきたこと(湯浅誠

本書は、2010年と2011年に日本学術会議「社会変動と若者問題分科会」と独立行政法人労働政策研究・研修機構が共同で開催した、2回にわたる「労働政策フォーラム―若者問題への接近」をもとに書き下ろし出版したもの。

様々な人が執筆しているので、問題の様々な側面がわかる。一方、論点が拡散している印象も。

第II部では、若者支援政策について、議論されている。
第5章では、「若者の自立保障と包括的支援」が語られ、第6章では、「企業の人材活用の変化と非典型雇用」の問題、第7章では、「新たな社会保障に向けて」として、若者の生活を守るためのいくつかの施策が提案され、第8章では、「雇用保険でも生活保護でもない第2のセーフティネットと伴走型支援」として、湯浅氏よりパーソナル・サポート制度が紹介されている。

若者の支援としては、若者自体に働きかける施策が挙げられることが多い。それは、職業訓練やキャリア教育、社会人教育、求職支援などだ。しかし、第7章で、執筆者の大津氏は以下のように述べる。

人を育てる政策となると、必ず挙げられるのはキャリア教育だ。だが、衣食住も確保されていない若者や、「読み書きそろばん」といった基礎学力も十分でない若者に、キャリア教育を押しつけているとすれば問題だ。そもそも、キャリア教育を十分にしても、彼らを待っている世界は、3人に1人以上が不安定な非正社員という現実だ。(p.162)

そして、若者の支援は、3段階で考えていく必要があると述べる。第1段階は「衣食住の生活保障」、第2段階は雇用創出、教育・訓練、労働時間規制、居場所整備など、労働市場規制や若者の訓練に関する支援、そして第3段階は、社会起業、短時間勤務等の、仕事と「生活」の調和を進める施策だという。
この枠組み全体に対するあまり詳しい説明はないが、第1段階の「衣食住の生活保障」として、最低賃金の引き上げ、住宅手当の恒久化、政府の低賃金への補助、企業の社会保険負担の軽減など、具体的な提案がなされている。
また、「若者を支援するにあたっては、困難な若者を「発見」→「誘導」→「支援」するという手順で進めていくことが欠かせない」という。

このように、困難を抱えた若者を支援するためには、政府や社会の包括的な支援が欠かせない。それぞれの政策のうち、どれが実行可能で有効かを議論することは、これからの課題だろう。