「就職困難者の就労と生活―大阪地域就労支援事業相談者調査から」

福原宏幸,2010,「就職困難者の就労と生活(1)―基本属性、就職相談と就労経験」『部落解放研究』190: 16-36.
李嘉永,2010,「就職困難者の就労と生活(2)―健康状態と住居」『部落解放研究』190: 37-49.
内田龍史,2010,「就職困難者の就労と生活(3)―貧困と社会的排除」『部落解放研究』190: 50-67.

2007年12月から2008年6月にかけて、大阪府内各市町村の地域就労支援センターおよび大阪府のJOBプラザOSAKAを利用している就職相談者の実態調査を行い、その結果を紹介した論文である。

福原氏によると、

大阪の地域就労支援事業は、自治体による雇用政策として全国でも特筆すべき制度として確立されてきた。ただし、大阪府は、2008年度からこの事業に対する予算を削減するとともに、補助金事業から交付金事業に移行した。このことから、市町村の事業負担が増し、また市町村主導で事業を推進せざるを得ない状況となった。(中略)他方で、この事業を利用したいという地域住民のニーズはますます増えている。(p.16-17)

では、この地域就労支援を利用するのは、どんな人々なのか。この3つの論文では、相談者の基本的属性、就労経験、健康と住居の状態、貧困などが、明らかにされている。
利用者は、端的に言えば、「就職困難層」である。
内田氏は、以下のように述べて論文を締めくくっている。

地域就労支援事業の対象となる「就職困難者」は、そもそも低学歴、健康問題や心身の障害、当面の生活費の工面や借金・家賃などの問題など、就職以前に解決すべき様々な困難が、立ちはだかっている。
地域就労支援事業の創設そのものが、従来のハローワークを軸とした職業紹介では就職につながらない人々への就職支援、そしてまたこれらの問題を前提とした就労支援であったとはいえ、これらの課題の重さが本調査においてもあらためて如実に示されることとなった。(p.66)