釧路市福祉部生活福祉事務所編集委員会編『希望をもって生きる―生活保護の常識を覆す釧路チャレンジ』(2009年)

希望をもって生きる―生活保護の常識を覆す釧路チャレンジ

希望をもって生きる―生活保護の常識を覆す釧路チャレンジ

第1章 当事者と援助者がともに地域に生きる「自立支援」の試み
1 生活保護・釧路の現状
2 自立支援プログラムへの取り組み―モデル事業始まる
3 自立支援プログラムの本格的指導
4 子ども支援・・中学三年生の居場所づくり
5 自立支援プログラムのシステム
6 ステップアップのために〜部活動から正課授業めざして
7 CHANGE! 福祉事務所

第2章 自立生活支援員として働いて
1 自己肯定感・自尊意識の回復を目指して
2 「自分で選ぶ・決める」ということの大切さ
3 肩肘はらずに「ためしに」やってみるということ
4 一緒に活動する
5 「ほめられ、認められること」の大切さ
6 それぞれのペースに合わせて持つことの大切さ
7 「自分を活かす場・居場所」の必要性
8 当事者同士の助け合いとつながり
9 「働く」ということ
10 情報の共有

第3章 「自立支援プログラム」の実感―委託事業所・参加者・生活福祉事務所の声
1 生活保護受給者をボランティアとして受け入れてみて
2 参加者の声
3 生活福祉事務所の声

第4章 自立支援プログラムを使ってみてケースワーカーに聞く
1 「自立支援プログラム」の始まったときの印象は?
2 今はどのような印象ですか?
3 プログラム参加者の選定はどのように行っていますか?
4 ケースワーカーから見た自立生活支援員の動き、役割など
5 参加者の様子や変化について
6 インターンシップを始めて
7 「溜め」をつくること、つながる・つなげることについて
8 プログラムを活用するにあたっての悩み、今後の課題

おわりに

釧路市は、生活保護受給者に向けた自立支援プログラムを独自に策定し、高い評価を受けている市である。
この本は、その自立支援プログラムの内容、理念、参加者の声を中心に、まとめたもの。

釧路市は、生活保護受給者の割合が、全国的にも高い地域である。炭鉱の閉山もあり、地元の産業が衰退するなかで、生活保護受給者の増加に対応するために、自立支援プログラムを始めた。
特に、生活福祉課が組織的に取り組み、釧路型の自立支援プログラムを遂行しているところが、特徴的である。生活福祉課が中心となり、様々な施策を考え、そして地域のNPOや企業を巻き込み、連携して、進めている。

その結果、これまでどちらかというと死亡による廃止が理由の一番であったものが、平成17〜19年度については、「就労収入増による廃止」が理由の一番になったという。

この試みは、従来の生活保護行政に対して、再考を促す。
いわく、「生活福祉事務所の内と外にある資源が手をつなぎ共同作業をするなかでの「新しい関係の構築」が重要になってくる」のであり、「磨くべきは、福祉事務所のマネジメントとしての関係設計能力」という。

釧路型自立支援のコアは、一つは福祉事務所が福祉事務所の外の社会や人とつながっていくという協働志向であること、そして地域社会のまとまりのためにも受給者の地域における居場所づくりを志向したこと。二つ目には、従来の製造・生産型の仕事がないことをきっかけとなり、働き方の多様さを志向していることです。三つ目には、中間的な就労という表現で言い表したかったことですが、人それぞれに自立のプロセスはあるという多様性を認めるということです。