樋口美雄・ジゲール,シルヴァン・労働政策研究・研修機構編『地域の雇用戦略―七カ国の経験に学ぶ“地方の取り組み”』(2005年)

地域の雇用戦略―七カ国の経験に学ぶ“地方の取り組み”

地域の雇用戦略―七カ国の経験に学ぶ“地方の取り組み”

もはや、国主導型の雇用創出策に頼ることは許されなくなった。
地域はこの危機感をバネに、みずからの再生策に取り組む―これが世界の流れだ。
各地方独自の雇用開発戦略のアイデアを、世界の豊富な事例から探る。

序章 経済開発と雇用創出を促進するための地域ガバナンス―日本の挑戦
第1章 日本で地域による雇用戦略が必要な理由
第2章 地域雇用開発、分権化、ガバナンスと政府の役割
第3章 多様の中に共通性を探る―EUの雇用戦略と地域の役割
第4章 中央集権国家における地域雇用開発―フランスの現状
第5章 ジェントルマンの“ニューディール”―イギリスの地域雇用政策
第6章 小さな政府の国におけるさらなる分権化―アメリカの地域経済・雇用開発
第7章 州や地域の特性を活かした多様な経済・雇用開発―アメリカの具体的プログラムのケーススタディ
第8章 柔軟な労働市場の形成―デンマークフレキシキュリティの取り組み
第9章 政府機関主導による促進―カナダの地域雇用戦略
第10章 地域雇用戦略の優等生―イタリアの“秘策”
第11章 細分化戦略―ドイツの地方雇用促進とジョブセンター
第12章 日本における地域雇用政策の変遷と現状

2章では、地域の雇用政策の特徴と政府の対応、労働市場政策および経済開発におけるガバナンスの役割、パートナーシップ・分権化・サービス供給体制の再構築がガバナンスに及ぼす影響、柔軟性および説明責任の問題が取り上げられている。今調査している自治体の政策を考えるうえで、参考になった。

中央政府は、利用できるすべての専門知識や資源を最大限利用して、問題に対して効果的、包括的、そして持続可能な解決を引き出す役割を担っている。この役割を果たすには柔軟性を高める必要があり、政府は雇用、訓練、社会扶助等の分野でパートナーシップ、分権化、サービス供給体制の再構築の試みを行ってきた。

政府は地域における政策運用の柔軟性をできるだけ高める一方で、サービス供給の効率性を維持し、投入された資源について説明責任を果たすことを目指し、それに応じて改革の内容を決定するべきである。
(p.67-68)