「リレー連載 生活保護制度改革とケースワークの担い手を考える」『賃金と社会保障』 (2005年)

第1回 問題の所在と書く報告と討論の概要
戸田典樹(大津市福祉事務所・生活福祉課・査察指導員)
『賃金と社会保障』No.1395(2005年6月上旬号)

第2回 “分離論”の立場から生活保護制度改革を考える
池田恵利子(いけだ後見支援ネット代表・独立型社会福祉士)「地域住民へのソーシャルサポートを基礎に、生活保護制度の再構築を」
清水浩一(明治学院大学社会学部教授)「認定業務とケースワークとは分離するのが原則」
『賃金と社会保障』No.1397(2005年7月上旬号)

第3回 “一体論(統合論)”の立場から生活保護制度改革を考える
吉永純(京都市役所)「生活保護の現場からみた分離論への疑問」
長谷川俊雄(愛知県立大学助教授)「「分離論」「一体論(統合論)」を超えて―民主的行政運用を確保できる環境整備を」
『賃金と社会保障』No.1399(2005年8月上旬号)

第4回 生活保護制度における所得保障とソーシャルワーク
大友信勝(龍谷大学社会学部教授)
『賃金と社会保障』No.1401(2005年9月上旬号)

このリレー連載は、生活保護制度における分離論と一体論(統合論)の論争をまとめたもの。もとになったのは、2004年第37回全国公的扶助研究セミナーのシンポジウム「生活保護改革とケースワークの担い手を考える」。分離論とは、生活保護制度において、金銭給付とケースワークを分離して実施すべきとする立場であり、一体論(統合論)は、それを統合して実施すべきとする立場である。

日本の生活保護制度に関しては、捕捉率の低さ、水際作戦による保護の拒否、受給者に対する差別やスティグマ、手続きの煩雑さなど、さまざまな問題点がある。生活保護制度の改革が議論されるなか、生活保護をもっと利用しやすい制度にしていこうという流れがある。一方で、受給を長期にするのではなく、就労に向けての支援をすることで、「自立」を促していこうという流れもある。そのようななかで、ケースワークはますます重要になってくる。

従来、金銭給付の鍵を握るケースワーカーがケースワーク(援助業務)をすることで、ケースワーカーと受給者との「対等な関係」が築くことができず、差別を助長するということが指摘されてきた。「自立」に向けた援助業務がますます重要になっていくなかで、分離論か一体論(統合論)かという議論は大事であろう。

論点整理をするうえで、役に立つ論文である。