Vallas, Steven P., William Finlay and Amy S. Wharton, "The Sociology of Work: Structures and Inequalities" (2009)

「仕事の社会学」の教科書。出版社はOxford University Press。

第1部は「イントロダクション」、第2部は「仕事の歴史的発展」、第3部は「職業構造」、第4部は「不平等」、第5部は「仕事の未来:重要項目と社会的選択」。

PART I: INTRODUCTION
1. The Sociology of Work: An Invitation
2. Theoretical Traditions in the Sociology of Work
3. Studying Workers and Work: Research Methods in the Field

PART II: THE HISTORICAL DEVELOPMENT OF WORK
4. The Industrial Revolution and Beyond: Culture, Work, and Social Change
5. The Second Industrial Revolution: Mass Production and Labor Management

PART III: OCCUPATIONAL STRUCTURES
6. Blue-Collar Workers and the Hidden World of Work
7. Managers: Careers at Work
8. The Professions: Power and Status in the Workplace
9. Service Jobs: Close Encounters with Customers

PART IV: INEQUALITIES
10. Unions in America: The Struggles of the Labor Movement
11. Gender and Work
12. Managing Diversity: Racial and Ethnic Divisions at Work
13. Immigrant Workers: Marginal Work, Networks, and Entrepreneurship

PART V: THE FUTURE OF WORK: KEY ISSUES AND SOCIAL CHOICES
14. Work and Family
15. The New American Workplace
16. Globalization and the American Workplace

2章では、第2世界大戦以後のアメリカで発展した、産業社会論、労働過程論、ポスト産業社会論についてまとめてあって、面白い。3章は方法論の章。アメリカの公式統計(用語の定義、サンプリング、コーディングなど)について紙幅をとって説明していた。

10章は、アメリカの労働組合についての章。
アメリカの労働組合運動が、なぜ、1930年代から第2次世界大戦が終わるまで、盛り上がりをみせ、その後勢力を失っていったのかが理解できた。また、これからの労働組合に関する展望もわかった。
この章のサマリーを訳しておく。

労働組合に所属する労働者の数は、1933年の300万人から、1945年の1500万人まで増加した。今日では、組合員の数は未だに1500万人にとどまっており、非農業部門の労働力の12パーセントを占めるに過ぎない(1945年は30%以上を占めていた)。

ホワイトハウスと議会からの政治的サポート(the National Industrial Recovery Actやthe Wagner Actのような組合結成を促進させる法律の制定)と、労働者が、雇用主に対して組合代表への構成的権利を認めさせるために、進んで自らの生活を危険に晒そうとする意志がうまく結びついたために、労働運動は盛り上がった。

その後、労働運動が盛り下がってしまったのは、一部は製造業経済からサービス経済へのシフトのためであるが、最も重要なのは、政治権力のバランスにおける変化であった。つまり、1947年のthe Taft-Hartley Act制定にみられるように、組合を組織することを急速に難しくさせるような労働法の整備が理由であった。

この法律は、経営者による組合への対抗姿勢を強めさせた。その対抗は、時には合法(厳しい反組合キャンペーン)であり、時には違法(法的に保護された労働者としての権利を行使しようとする労働者を公然と解雇すること)であった。結果として、今日の組合は、過去のようには、従業員の代表権を争う選挙で勝てなくなった。

組合の組織率の低下のコストは、より低い賃金、縮小されるフリンジ・ベネフィットや雇用の安定性の観点からだけではなく、職場での独立した発言権の喪失の観点からも、実感される。特に、この脱工業化のなかで、アメリカの労働者の運動が復活の瞬間を達成できるかどうかは、まだわからない。政府セクターとサービスセクターの労働組合運動の高まりが、重要な鍵を握るかもしれないが、それがどのような実を結ぶかは、これからみてみなければならないだろう。

アメリカの「仕事の社会学」の教科書はこんなもんなんだ、ということがわかって、面白かった。