野田博也「アメリカにおける貧困への視座と対策」(2011年)

野田博也,2011,「アメリカにおける貧困への視座と対策」『海外社会保障研究』 No.177: 4-14.

本稿の目的は、アメリカにおける公的扶助の条件を分析し、条件の特徴及び条件を適用する貧困者への影響を考察することである。多くの事業から成るアメリカの公的扶助体系は、法規や運用主体が異なるために断片化し、水準や支給方法にかかる条件も事業間では非整合的となる側面がある。就労自活が求められる有子家庭への主要な現金給付の条件を詳しく分析すると、単給は、それぞれの水準は生活資源の不足分を補足するものではなく、また支給方法の特徴は事業ごとに異なる。併給では、労働時間が長い場合、最低賃金と主要な給付の水準の合算で貧困を脱することが見込まれる。他方で、併給によって寛厳の異なる支給方法が組み合わさると、いくつかの条件は厳格化し、私生活原理としての自由・自律の側面への制約を強める。併給による条件の厳格化は計画された結果ではなく、明確な政策意図に基づいていない。政策的な討議を欠いたままに生じている自由・自律の制約は正統化できない。

アメリカの、以下の3つの公的扶助について考察。

  • Temporary Assistance for Needy Family: TANF
  • Earned Income Tax Credit: EITC
  • Supplemental Nutrition Assistance Program: SNAP

TANFは保健福祉省、EITCは財務省、SNAPは農務省が管轄。
これらの施策が出てきた背景もバラバラ。

複雑で理解しがたいのも無理はない・・・