ジェレミー・リフキン『大失業時代』(1995=1996年)

大失業時代

大失業時代

第1部 テクノロジーの二つの顔
第1章 労働の終焉
第2章 テクノロジーのおこぼれ効果と市場の現実
第3章 テクノ・パラダイスのビジョン

第2部 第三次産業革命
第4章 ハイテク・フロンティアへの旅
第5章 オートメーションをめぐる大論争
第6章 脱フォード主義の時代

第3部 世界から労働者が消えてゆく
第7章 いなくなった農民たち
第8章 滅びゆくブルーカラー労働者
第9章 最後のサービス労働者

第4部 繁栄の代償
第10章 ハイテク時代の勝者と敗者
第11章 労働者階級へのレクイエム
第12章 国家の運命
第13章 さらに危険を増す世界

第5部 脱市場時代の夜明け
第14章 就業時間のリエンジニアリング
第15章 新しい社会契約
第16章 第三部門の活性化に向けて
第17章 社会経済のグローバル化

1995年に書かれた本だけど、時代遅れには思えない、現代にも通じる論点が含まれている本だと思う。
考えてみれば、「労働に関する謎」ってたくさんある。

これほど豊かな社会で、過労死がなくならないのはなぜ?
若者が減っているのに、若年者の失業率が高いのはなぜ?
なぜあるところでは労働者が不足しているのに、失業者はなくならないのか?

テクノロジーが雇用に与える影響について、生産性の拡大によってもたらされた富をどうやって分配するかということに関して、今、もっと真剣に考える必要がある。

わたしたちはいま、歴史上に類がないほど巨大な社会的変化をもたらす新たなテクノロジー革命のまっただなかへ押し流されようとしている。
この新しいハイテク革命は労働時間を短縮させ、幾百万の人々に大きな恩恵を与えるかもしれない。近代史上はじめて、多くの人間が伝統的な市場での長時間労働から解き放たれ、余暇活動を追求する自由を手に入れる可能性が生まれたのだ。だが、その同じテクノロジーの力は、失業の増加と世界規模の不況をいともたやすく招きかねない。
わたしたちを待ち受けている未来がバラ色に輝くか灰色にくすむかは、情報化時代における生産性の向上で生みだされた利益がどのように分配されるかに大きく左右される。

利益が公正平等に分配されるには、全世界で労働時間を短縮し、もはや市場ではその労働を必要とされない人々に対して民間部門でも公共部門でもない第三の部門―社会経済(social economy)―による代替雇用を促進するよう各国政府が一致協力して取り組む姿勢が欠かせない。だが逆に、ハイテク革命による生産性向上でもたらされた富が、もっぱら企業の儲けをふやすために、あるいは株主、企業のトップ、そして新たに生まれつつあるハイテク知識労働者というエリート層の利益のためにもっぱらもちいられるならば、持つ者と持たざる者との溝はますます広がり、ひいては全世界的な規模の社会的、経済的混乱を引き起こしかねない。(「第1章 労働の終焉」より)