宮本太郎編『弱者99%社会―日本復興のための生活保障』(2011年)

弱者99%社会 (幻冬舎新書)

弱者99%社会 (幻冬舎新書)

生活保護者数205万人、完全失業者数334万人、気分障害うつ病など)の患者数104万人…これらは超格差社会を表す氷山の一角に過ぎない。
いま誰もが普通の生活者から脱落するリスクを抱えている。
だが、現在の日本の生活保障でこれ以上国民を救済する事は不可能である。
このままではそう遠くない未来、格差限界社会へと突入してしまう。
日本人全員が同時多発不安に陥るなか、私たちができる事とは一体何か。
12人の識者と宮本太郎による緊急提言。

序章 「同時多発不安」を超えて(宮本太郎)
第1章 経済成長と両立できるか(京極高宣;吉川洋;宮本太郎)
第2章 現役世代をどう支えるか(濱口桂一郎湯浅誠;宮本太郎)
第3章 つながりは再生できるか(森雅志;小林正弥;宮本太郎)
第4章 子どもの未来をひらけるのか(泉健太水島広子;宮本太郎)
第5章 財源をどうするのか(大沢真理;土居丈朗;宮本太郎)
第6章 政治をどう変えるか(藤井裕久与謝野馨;宮本太郎)

「日本復興のための社会保障」の4つのポイントとして、
(1)全員参加型社会
(2)社会保障と経済の相乗的発展
(3)生活保障の再生を通しての「つながりの再構築」
(4)未来への投資としての「次世代育成」
が挙げられている。

深く議論されているわけではないが、さまざまなトピックが扱われており、興味深かった。

第1章で議論されているのは、「社会保障の充実を経済成長のバネに!」ということ。人口減少は経済成長の鈍化には必ずしも直結しない。これまでの「土建国家」から、「保健国家」への転換が必要。社会保障分野、つまり、医療や介護で働く人のことを、もっと考える必要がある。
必要なのは、賢く投資することだと思う。「ムダの削減」だけでは、社会の成長を期待することができない。給付(の削減)ばかりを気にするのではなく、社会保障産業で働いている人を支え、潤すための政策。